動けない、動かさない


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【リクエスト作品】幼情(前編)
2014/09/03 21:06

リクエスト作品


これの続編です。

■□■
話は数時間程前に遡る。

魔物退治に乗り出したリアラとコレットには他にも二人の仲間がいた。

最初は四人全員で行動していたが、広い森でたった一体の魔物を探す事は難しく、途中で話し合った結果、二人チームを二つ作り手分けすることになった。

リアラとコレットのチーム。そして、アニスとジュディスのチームだ。



■□■
「でもさぁ……。一体だけなら別に四人で来なくても良かったんじゃない?」

疲れた顔をしながらアニスが呟く。

「あたし、もう疲れたぁ〜」

そして地面に座り込んでしまう。

「じゃあ、すこし休憩してなさい。確かに一体だけなら楽勝でしょうからね」

やれやれといいたげな顔でジュディスは言うと、待ち合わせ場所と時間を確認すると一人で先へと行ってしまう。

「……はぁ」

一人になったのを確認するとアニスは大きくため息を付いた。

アニスがギルド“アドリビトム”に来てからもう数ヶ月経つ。
だが、いまひとつ馴染めている気がしなかった。

理由の一つは単純に同い年の女子がいない事。
一、二歳程度の差なら良いが、まだ遊びたい盛りの十三歳のアニスにとっては、十六歳のリアラやコレットが話す様な色恋話にはついていけない。

……補足させてもらうと、アニスとしては、恋愛としての相性よりも金銭面の方が大事なのだ。
家族が他人にお金を貸して散々な損をした苦い過去があり、男を見る時はお金を持っているかどうかが気になってしまう。

単純に恋愛で話をしているリアラとコレット達とは上手く話が合わないのだ。

さらに、十九歳のジュディスもアニスからしたら、もう大人に見える年齢だ。多少の話こそすれ、話が弾む事はそうそうない。

もう一つは、他のギルドのメンバーとは違い、アニスは“仕事”としてアドリビトムに加入していると言うこと。

他のメンバーがボランティア等の理由で参加しているのに比べて、どこか一歩引いて見てしまう。
今回の依頼も、アドリビトムの有志で行っているのだが、人数合わせに無理矢理行くように上司から命じられただけだ。

正直、世界平和だとか困っている人を助けるだとかはアニスにとってはどうでもいい。
自分は自分の仕事をするだけだ。

……だが、他のメンバーは平和だとか愛だとかそんな物を見ている。 

まるで自分だけ浮いている様な感覚。
……居心地が良い場所なんて、到底思えない。

その結果、モチベーションが上がらずに仕事をサボる事も増えていた。

「このままじゃあ。いけない……よね」

頭でわかっている事を口に出す。

もっと、自分から歩みよる必要があるのだ。
今更ながら、先程のジュディスに対しても一言「一緒に休もう」とでも言えば良かったのではないかと思った。

おだてる様な言葉は出て来るのに、友達一人まともに出来ない自分が、やけに滑稽に思えてきた。

今更ながら、ジュディスを追いかけようかと立ち上がった時、近くの木の影に何かが動くのを見た。

一瞬、敵かと警戒したがそれは、長い髪の少女だった。



■□■
「あんた名前は?」

「……」

少女は答えずに俯いたままだった。
よくみると、手には紫のぬいぐるみが握りしめられていた。

「ティポが……」
「……え?」
「ティポが破れて……ティポが動かないと……私……」

どうしよう。会話が全く成り立たない。

アニスはどうしたものかと首を傾げていると、目の前の少女はとうとう涙を流してへたり込んでしまった。

どうしよう。ものすごくウザいタイプだ。
アニスの知り合いにも、こうしてやたらメソメソする少女がいる。
たいてい、その場合泣きやませるには……。

「ティポってそのぬいぐるみのこと?」

アニスの声に、少女は少し顔を上げると、コクリと頷いた。

「じゃあ、貸して」

「……え?」

「直して上げるから」

たいてい、こういうメソメソウジウジする女は自分では何もしない癖に“心のよりどころ”を持っていて、それに甘えているだけだ。

だったら、それをなんとかすれば、とりあえずは泣き止む。

「お裁縫……上手……ですね」

近くの切株に腰掛け、手持ちのソーイングセットで少女のぬいぐるみを縫うアニスに少女がたどたどしく話し掛けて来る。

「まぁね。女の子アピールってのはいつでも何処でも出来る様にしておかないといけないからね」

……何が悲しくて、女の子相手に女の子アピールをしているのだろうか?
半分、自嘲気味に自分で問い掛ける。 

当てもなく何処へ進んだかわからないジュディスを追うよりも、何となくだが自分の知り合いに似たタイプのこの少女の方が話し相手に合っている様な気がしたので、手を差し延べて見たが……。

やっぱり、アニスからは特に話す言葉が出て来なかった。

無言というのも何か気持ち悪いので、話題を探す。何故こんな所にいるのか、と聞こうかと思ったが「所詮は他人事だ。聞いてどうする」と頭に過ぎる。

話し相手は欲しいが、変に関わりすぎるのもウザい。
……こんな性格だからまともに話しすら出来ないのだろうか。
ふと、横を見ると少女が食い入る様にアニスの手つきを眺めていた。

「な、なに?」

「あ、私……お裁縫した事なくて……凄いなぁって……」

「ふーん?」

身なりも良さそうだし、何処かの令嬢なんだろうか?
裁縫等しなくとも次から次へと良い服を買って貰える様な……。

「……あ。あなた、ぬいぐるみを……」

「ああ。持ってるけど?」

アニスの隣に座らせたぬいぐるみに少女は目をやる。

「自分で修理とかするの?」

「……まぁね」

「凄い……!」

「別に、破れた所を縫うぐらい普通じゃない?」

「……普通?」

少女は小首を傾げると考えこんでしまった。

いよいよもってアニスは本格的に悩んでしまう。

こういうリアクションを取られた場合、なにを話せばいいのだろうか?

考え込むと余計に言葉が出てこなくなる。
再び、少女と目が合う。

……どうしよう!

とりあえず、男の人に見せるような愛想笑いをしてみる。
……って、だから女の子相手に女の子アピールしてどうする!?

再び自己嫌悪に陥りそうになった時、少女は少し大きな声で、

「あ、あのっ!」

アニスに呼び掛けた。

思わず、顔を上げるとやや赤い顔で少女は口を開いた。

「わ、私と……おっ、お友達になって、くっ、ください!」

「へ……?」

突然の事に顔が引き攣る。
いくらお人よし集団のアドリビトムの人間でさえ、「お友達になってください」等は言わない。
……少なくともアニスは言われた事がない。

「えっと……」

頭がスパークし、上手く働かず、アニスは少女の方を向いたまま、口を無意識に動かす。

「……な、名前は?」
「えっ、エリーゼって言います!」 

「エッエリーゼ?」
「えっ?エリーゼです。エリーゼって言います!」

「年齢は?」
「十二歳です!」

「あぁ……はい……」
「はいっ!」

………………
…………
……

「と、トモダチィィィィィィッ!?」
「はい、友達に……なってください!」

「思わず、何処かの国の王様みたいな事を言ってしまったけど!
友達ってなに!?
なんで友達!?」
「えっと、友達って言うのは、仲良しになるって事で……」
「いや、友達ぐらいわかるけど!」

思わず、顔が熱を持つ。目の前のエリーゼと名乗った少女も半分やけになったのか、食い気味にアニスの問いに答えてくる。

エリーゼの表情も完全に赤くなっており、それにつられてアニスの顔も赤くなってくる。

ど、どうすれば良い?
こんな時はなんて返事をするべきだろうか?
「いきなりそんな事言われても困る」と言い、断るべきか?

いやいや、それではまるで男の人から告白された時の返事ではないか。では……

「ヨ、ヨロシク……オネガイシマス」

「はい。よろしくお願いします!!」

……こうしてアニスに生まれて初めての友達が出来たのだった。 
■□■
後編

カテゴリ:リクエスト作品

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